「おー遅かったじゃん!」
「お、優子お疲れー!」
「お疲れ……さま」
リビングのドアを開けると夏紀、希美、みぞれが声をかけてきた。
今日はみぞれの誕生日、みぞれのアパートで誕生祝いをするために四人で集まる予定だった。私は6限まで講義のある曜日だったため、そもそもがギリギリだったところに電車の遅延が重なってしまいパーティーの終わり頃の到着となってしまった。
リビングの中央には丸いローテーブルが置かれており、みんなが車座になって腰掛けている。その中央に置かれている物を目にして私は思わず固まった。
なぜ、失敗作のケーキが置かれている?
ケーキを置いた張本人は呑気にコーヒーを啜っている。
私は「夏紀、ちょっと」と腕を掴んでリビングから引っ張り出した。
「なんでよりにもよって失敗したケーキを持ってきたのよ。お店で買ったやつと間違えるとかバカじゃないの。分かりやすいように冷蔵庫の一番手前に入れていたでしょうが」
「えー冷蔵庫には失敗したケーキなんてありませんでしたけど?」
「アンタねぇ、嫌がらせのつもり?」
「あんたへの嫌がらせでみぞれと希美を巻き込むわけないじゃん」
「そこ威張るところじゃないんですけど?」
「まぁ、見てみなよ」
そういうと夏紀は僅かに開いているドアの隙間に視線を送った。まだ夏紀に言いたいことは色々とあったが、ドアにそっと近づいて部屋の中を覗いてみると、希美が「おいしいね、みぞれ」と話しかけている。それに対してみぞれはコクリと頷き「うん、おいしい」と応えていた。……やばい、泣きそう。
「ね?」
夏紀がイタズラに成功した悪ガキみたいな顔をしてニカっと笑う。コイツのこういうところホントにムカつく。
「やっぱせっかく作ったんだからみぞれに食べてもらわないと勿体無いじゃん」
「それもそうね、私の作ったケーキをアンタなんかが独り占めするなんて勿体無いもの」
私は照れ隠しに冗談混じりで応える。
「いやいや、あの量を一人で食べろって言うのは流石に罰ゲームでしょ」
「私は誰かさんが出したすんごい量のケーキを食べ切ったんですけど?」
あの時のことを思い出して夏紀はクスクスと笑う。
「あれはクレープでしたよ?お客様」
あんなクレープがあってたまるか。
「……アンタ来年の誕生日は覚悟しなさいよ」
「へぇ?来年も祝ってくれるんだ」
「……当たり前でしょ」
そう応えると夏紀は微笑んで「また四人で集まれるといいね」そう言い残すとリビングに戻って行った。
翌日、私達は買い直していたホールケーキを二人でひいひい言いながら食べる羽目になるのだけれど、それはまた別のお話。
来年も、また
鎧塚みぞれ生誕祭……と言いつつの大学生なかよし川のお話